日本薬局方一般試験法「エンドトキシン試験(ゲル化法)」を実施しています
概要
エンドトキシンは大腸菌などのグラム陰性菌の細胞壁を構成するリポ多糖類です。
エンドトキシンがナノグラム程度の微量でも血中に入ると、発熱などの生体反応を引き起こし、敗血症の主要な原因物質と考えられています。
エンドトキシン試験は日本薬局方一般試験法に準拠し、ゲル化法によりエンドトキシンを検出する試験となります。
エンドトキシン試験法
日本薬局方に記載されているエンドトキシン試験法は3種あり、カブトガニの血球抽出成分より調整されたライセート試薬を用いてグラム陰性菌由来のエンドトキシンを検出するゲル化法、ライセート試薬のゲル化過程における濁度変化を光学的に測定する比濁法、合成基質の加水分解による発色を光学的に測定する比色法の3種があります。
日本薬局方においては、「試験結果について疑義がある場合又は係争が生じた場合は、別に規定するもののほか、ゲル化法の限度試験により最終の判定を行う」と記載されています。
ゲル化法
1.予備試験(ライセート試薬の表示感度確認試験)
エンドトキシンの検出試薬であるライセート試薬は、カブトガニの血液から作られているため、試薬のロットの変更など試験結果に影響を与える可能性がある事象の発生に際して、試験の精度と有効性を保証するために試薬に記載されている検出感度を確認する必要があります。
2.反応干渉因子試験
サンプル溶液がライセート試薬のゲル化反応を促進または阻害する因子を含んでいないかを調べる試験を行います。反応干渉因子が無かった場合はそのまま試験方法の確立、反応干渉因子がある場合については希釈または適切な処理(ろ過、反応干渉因子の中和、透析、加熱処理など)を施し、試験条件を整備して試験方法を確立させます。
3.限度試験法
反応干渉因子の影響を回避できるサンプル溶液の処理方法など確立した試験方法によって、サンプル溶液が設定したエンドトキシン量を含むか否かをライセート試薬のゲル化反応により判定します。
実例
試薬に表示されている感度(表示感度)以上のエンドトキシンが試料溶液に含まれていた場合、ライセート試薬がゲル化します。
ゲル化の判定は試験管を180度反転させて観察した際に、「流出しない堅固なゲルが形成されているとき、陽性とする。ゲルを形成しないか、又は形成したゲルが流出するとき、陰性とする。」と薬局方に規定されています。
陽性
陰性
実施事例
バイオ医薬品製造に使用される使い捨てプラスチック製品の試作品について、日本薬局方一般試験法エンドトキシン試験に準拠して試験を実施しました。
方法
個包装の使い捨てプラスチック製品内部へエンドトキシン試験用水を封入し、室温で1時間放置してから回収しました。(JIS T 3210滅菌済み注射筒などに記載の手法)
清浄なビーカーへ封入液を回収し、試料溶液として日本薬局方一般試験法エンドトキシン試験法ゲル化法により試験を実施しました。
結果
回遊した試料溶液のエンドトキシン含有量はライセート試薬の表示感度以下であり、試験検体である医薬品製造用のプラスチック製品内部のエンドトキシン汚染はありませんでした。