バイオ医薬品とは
バイオ医薬品(バイオ医薬とも呼ばれる)は、主に生物由来の物質を利用して製造される医薬品で、従来の「化学合成医薬品」とは異なる特徴を持っています。
微生物、動物細胞、植物を使って製造されます。分子構造が大きく複雑で、特定の標的に対して非常に選択的に作用します。副作用が比較的少なく、治療効果が高い事が多いです。
バイオ医薬品製造に用いられる
シングルユース製品について
バイオ医薬品製造のためのシングルユース製品とは、バイオ医薬品製造工程で一回限りでの使用を前提とした製品や装置の総称です。主にポリエチレン、EVA、ポリプロピレンなどのプラスチック素材で構成され、フィルムバッグ、チューブ、コネクタ、フィルタなどがあり、これらをアセンブルした大型の製品もあります。
シングルユース製品のメリットは下記になります。
・クロスコンタミネーションリスクの低減
・一回使い切りのため、洗浄・滅菌およびそのバリデーションが不要
・製造ラインの組み換えが容易なため、同一製造ラインで多品目製造に対応可能
・製造ラインの導入、立ち上げ時の各種適格性確認が簡略化できる
しかしながらプラスチック材料由来の抽出物、浸出物や不純物の残存によるバイオ医薬品への影響が懸念されるため安全性試験が必要となります。
シングルユース製品の安全性試験
シングルユース製品を用いることで影響を受ける品質上の事象に、溶出物や不溶性微粒子等の不純物の残存があります。バイオ医薬品製造工程中に持ち込まれることにより,健康被害や製造阻害をもたらすことがないようEs/Ls(抽出物/浸出物)試験、不溶性微粒子試験、エンドトキシン試験などの各種安全性試験を行います。
Es/Ls試験
抽出物(Extractables)は、苛酷条件下でシングルユース製品から内容液に移行する化学物質。浸出物(Leachables)は実際の使用条件下でシングルユース製品から内溶液に移行する化学物質を指します。
試験方法の設計、Es/Ls試験実施からGC/MS・LC/MSを使用して抽出物、浸出物の分析を行います。試験結果に関しての考察も行います。

不溶性微粒子試験
不溶性微粒子とは気泡ではない容易に動く外来性、不溶性の微粒子を指します。目視可能なものは不溶性異物として区別しています。
不溶性微粒子試験ではシングルユース製品製造由来の不溶性微粒子数の計測を行います。
液中パーティクルカウンターを用いて光遮蔽粒子計数法で各粒子径の個数を計測し、管理範囲内にあることを確認します。

エンドトキシン試験
エンドトキシンは微量でも発熱やショックを引き起こす可能性がある発熱性物質(パイロジェン)の一種です。血液中に入ると発熱やショックなどの作用が起こることから、特に生体内へ直接導入される注射剤においては、厳重な管理が必要となります。
エンドトキシン試験は、エンドトキシンによりカブトガニの血球成分が凝固することを利用した試験です。弊社ではゲル化法によりエンドトキシン試験を実施しており、必要に応じ反応干渉因子試験(限度試験を兼ねる)を実施しています。日本薬局方に基づき、流出しない堅固なゲルが形成されているときを陽性とし、ゲルを形成しないか、又は形成したゲルが流出するときを陰性とします。

陽性

陰性
ヌクレアーゼフリー試験
ヌクレアーゼはDNAを分解するDNase、RNAを分解するRNaseなど、核酸を分解する酵素のことです。ヌクレアーゼはあらゆる場所に存在しております。医薬品製造プロセス中にヌクレアーゼが混入することで、医薬品、特に核酸医薬の品質が担保できない可能性があります。
シングルユース製品のヌクレアーゼフリー試験ではDNA、RNAの分解度合いを測定し、ヌクレアーゼフリー(検出限界以下)であることを確認します。

完全性試験
シングルユース製品が物理的、微生物学的なバリアとして適切に機能しているかを確認するために実施します。クオルテックでは主にアレニウス式から算出された温度加速条件にて加速処理を行うなどして、保証期間相当の保管を行った後に、外観観察・官能試験での異常確認、リークテストを実施します。
大型恒温槽により大型アッセンブリー品の試験にも対応できることが特徴です。

理化学試験
化学的および物理的な方法を用いて、有効成分の含量や純度、不純物、性状などを調べる試験です。
当社では主に日本薬局方一般試験法、医薬品各条項の確認試験について対応しております。

試験の目的 | 内容例 |
確認試験 | 成分がその医薬品であることを確認(例:呈色反応、沈殿反応など) |
純度試験 | 不純物の有無や量を確認(例:塩化物、硫酸塩、重金属など) |
定量試験 | 有効成分の含量を定められた範囲内にあるか調べる(例:滴定法、HPLCなど) |
性状の確認 | 外観、におい、溶解性などを確認 |
その他の測定 | 融点、比重、pH、屈折率、吸光度などの物理化学的性質の測定 |
無菌試験 ※試験環境準備中
シングルユース製品はあらかじめ滅菌処理が行われており、洗浄・滅菌の必要がないことがメリットとなっています。通常、シングルユース製品はガンマ線によって滅菌処理されています。無菌試験によって滅菌プロセスの有効性が確認されます。製品の製造工程、製造環境の管理状態、包装が微生物の侵入を防いでいるかを確認することも可能です。
※ 現在試験環境準備中。個別にお問い合わせください。

左:ガンマ線照射あり
右:ガンマ線照射なし
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