分析・故障解析
Analysis
分析・故障解析

製品の無菌性を恒常的に保証する「滅菌バリデーション試験」

概要

バリデーションとは、医薬品や医療機器の製造工程、製造方法が科学的な根拠に基づいたものか、また科学的に妥当であるかを検証する工程です。
厚生省の定めるGMP省令にて「製造所の構造設備ならびに手順、工程その他の製造管理及び品質管理の方法が期待される結果を与えることを検証し、これを文書化すること」と定義されています。

殺菌と滅菌

殺菌とは細菌・ウイルスなどの微生物を死滅させることですが、その量については明確な定義はされておらず、たとえ10%程度でも微生物を死滅できれば殺菌と言えます。
対して、滅菌とは有害・無害問わず、すべての微生物を死滅または除去する事であり、日本薬局方において「微生物の生存する確率が100万分の1以下になること」と明確に定義されています。

滅菌方法

滅菌方法はいくつも種類があり、滅菌する対象の材質や特性に応じた滅菌方法を選択する必要があります。
1.火炎滅菌
最も簡単な方法で、対象物を炎で加熱し、表面に付着した微生物や有機物を焼却する方法です。ガラス製や金属製など熱に強く小型の器具に用いられ ます。
2.オートクレーブ滅菌
オートクレーブは、巨大な圧力釜のような機器で、加圧環境で通常よりも高温の水蒸気を使用して加熱する滅菌方法です。熱に強く水にぬれても問題ない物に広く使用されています。
3.乾熱滅菌
電気オーブンを用いて、200℃前後まで加熱する滅菌方法です。熱に強い器具などを滅菌する際に用いられます。
4.フィルター滅菌
穴のサイズが0.22µm以下のフィルターを用いて、熱に不安定な溶液や揮発性の高い有機溶媒を滅菌する際に用いられます。
5.EOG滅菌
エチレンオキサイドガスを用いて滅菌する方法です。熱に弱いプラスチック製品や、複雑な形状の器具などに用いられます。
6.ガンマ線滅菌
電磁波を照射する事で微生物を死滅させる滅菌方法です。包装材を透過するため、密閉した容器内の物を滅菌状態を維持したまま持ち運びが可能です。主に個包装の使い捨て器具などに用いられています。

実施事例

無菌が要求される使い捨てプラスチック製品の試作品について、滅菌についてのバリデーションを行いました。

方法

滅菌方法は個包装の使い捨てプラスチック製品であることから、ガンマ線滅菌を選択しました。
包装内に放射線耐性の高い菌を100万個以上付着させたろ紙を一緒に封入し、ガンマ線照射を行った後、ろ紙を培養液に浸して菌が増殖していないことを確認しました。

結果

ガンマ線照射をしていないろ紙を入れた培養液は細菌が増殖することで、濁りと変色が起きていますが、ガンマ線照射を行ったろ紙を入れた培養液は濁りも変色もなく、菌が死滅しているといえます。ろ紙に付着している菌は100万個以上なので、微生物の存在する確率を100万分の1以下にまでする定義に当てはまり、試作品に対するガンマ線滅菌は科学的に妥当であるとバリデートされました。

  • 左:ガンマ線照射有り    右:ガンマ線照射無し